においで悩んでいる人たちが気軽に集えるカフェ、IROHAさんインタビュー
- ibsplaceinfo
- 2023年1月28日
- 読了時間: 7分
自分のにおいで悩んでいる人たちが、気軽に集まって話をしたり相談できる場所を作ることで、少しでも「生きづらさ」を減らす力になりたい―――
受容し合うことに価値があると感じている、IROHAさん。
気持ちを分かち合うことで、独りじゃない、「生きてていいんだ」という生きる力が得られたり、自分に自信が持てる。
そんなご自身の体験から、仲間が作れる場所・カフェ開業のクラウドファンディングを1月31日まで実施中。
キッカケやターニングポイントについて、お話を伺いました。
人生IROHAさん においの悩み33年、現在48歳。6人の子供を持つ主婦、パート勤務。 中学生の頃からわきがで悩み、高校生の時に「せん除法」手術するも33年間においに悩んできた。 2023年1月末までクラウドファンディング実施中。 https://readyfor.jp/projects/nioinayamicafe?sns_share_token=444c4d189f491122639b&utm_source=pj_share_url&utm_medium=social
もくじ
においのお悩みとは
わきがとは
PATMとは
IBSとは
魚臭症とは
自臭症とは
日本と世界のにおい事情を比べると
IROHAさんご自身について
症状のスタートは?
対策は?
その後の経過は?
どう乗り越えてきたのか?
IROHAさんが企画に至るまでの道のりについて
ストーリー
Twitterがカフェを考えたはじめたキッカケ
オフ会が、IROHAさんに自信を取り戻させたターニングポイント
そして、動き出す。カフェ開業への思い
においのお悩みとは?
わきがとは
わきが(腋臭症/えきしゅうしょう)。
わきがという名称は、腋(ワキ)の下(ガ)で発生するにおいであることに由来。
脇や陰部等の皮膚下にアポクリン腺が多い部位から分泌される汗が原因で強い特有のにおいを発すること。
脇はわきが・股はすそが(すそわきが)と呼ばれています。
日本人では10人に1人の割合で発症すると言われています。
もっともわきが体質が多いのはアフリカ系人種でほぼ10割、ヨーロッパ系人種では7~8割。人種によっても違ってくるようです。
わきがは優性遺伝し、親から子へ遺伝することが多く、耳垢が湿っている人が多いと言われています。
(参考 https://odorate.co.jp/taishulab/wakiga-japanese
PATMとは
PATM(パトム/People are Allergic To Meの略称)。
直訳すると、「人々のアレルギー源である私」という意味。
患者のそばにいる人がアレルギーを起こし、クシャミ、鼻水、咳き込み、頭痛などの体調不良を訴えることもあると言われています。
ここ数年、症状を訴える患者が増えているが、PATMの原因はまだ解明されていません。
IBSとは
IBS(過敏性腸症候群/Irritable Bowel Syndromeの略称)。
検査をしても炎症や腫瘍などの異常が見つからないのに、下痢や便秘などの便異常を繰り返し、原因がわからないまま、腹痛・ガス症状に悩む症状です。
日本人の7人に1人はIBSと言われています。
魚臭症とは
魚臭症(ぎょしゅうしょう/トリメチルアミン尿症)。
食べ物を摂取、消化するときに発生するトリメチルアミンという物質が肝機能で分解されず、息、汗、尿に排出されるため、体から異臭を発するまれな疾患です。
トリメチルアミンは魚の腐ったにおいがするため、魚臭症といわれています。
遺伝子変異により、幼い頃から症状の現れる患者、肝臓や腎臓疾患が原因で、後発する患者など様々。
現状では、根本的な治療方法がないため、体臭が出にくい食べ物を選ぶといった食事療法がとられます。
(参考 https://fdoc.jp/byouki-scope/disease/trimethylaminuria/)
世界でも700人ほどしか患者数がいないといわれている、とても症例が少ない疾患。
また女性ホルモンの影響も考えられており、魚臭症になる人は女性に多くみられるとか。
自臭症とは
自臭症(じしゅうしょう)。
実際にはにおいが無い(過去にあったが完治している場合も含む)にもかかわらず、周りの人が嫌悪感をいだくような口臭や体臭を自分は発している、と思い込んでしまう症状です。
過去に、自分のにおいに関して、他人から指摘されたことで引きずってしまい、この症状のきっかけとなることもあるようです。
周りにいる人が、咳き込む、鼻を押さえる、鼻をすする、自分が近くに来た時にマスクをする、などの行為に対しても自分が原因なのではないか、と気にしてしまい人間関係がうまくいかなくなることも。
日本と世界のにおい事情を比べると
わきがを参考に海外と比較して見ると・・・
個人差はあれども、日本人では10人に1人、海外だとほぼ100%がわきが体質という民族もあり、多くの人がそうした体質であるため、それをむしろ個性ととらえて体臭に寛容で、課題や悩みは日本人より少ないようです。
日本人はにおいのない清潔な環境に慣れすぎているため、逆に諸外国よりもにおいを気にする気質があるのかもしれません。
特に日本人は「周りとは違う」ことに敏感、周りと比較する文化が強い、そして「他人に不快感を与えるかもしれない」という不安は、日本固有の問題かもしれません。
(参考 https://sogyotecho.jp/odorate_ishida/)
著作者:upklyak</a>/出典:Freepik
IROHAさんご自身について教えてください。
症状のスタートは?
中学2年生の頃からわきがで悩み、くさいと思われるのが怖くて、人を避けるようになりました。
中学2年生のときに姉の除毛クリームを内緒で使い、それがキッカケかは分かりませんが、わきがのにおいが気になるようになりました。
思春期は、普通の人の何倍もケアをしていましたね。
元々遺伝もあったと思います。
父の耳垢は黄色でねっとり(アメ耳と呼ばれる、湿気の多い耳垢)。
わきが体質は、耳垢が黄色い人・湿気の多い人に多いと言われており、自分もそうでした。
対策は?
高校生の時に「せん除法」手術をしました。
※剪除法(せんじょほう)とは
わきのしわに沿って数センチだけ切開し、においの元となるアポクリン汗腺やエクリン汗腺を取り除く手術のこと。
その後の経過は?
手術後は、自分の鼻ではわきがのにおいは分からないのに、周りからはくさいと陰口を言われたり、態度でくさい(鼻をすすられたり塞がれたり)と言われることが続きました。
周りの反応が変わらなかったので、引き続き「私はくさい」と思って生きていました。
今考えれば、この時点でにおいは無くなっていたのかも知れません。
でも、実際に陰口で「お風呂入ってるのかね?」と言われたこともあるので、やはり自分はくさいと思っていました。
どう乗り越えてきたのか?
自分がどんなにおいで、どこからにおうのかも分からなくなり、しかも手術が最後の砦だと思っていたので、行き詰まり「死にたい」とまで思いました。
でも実際は、そんな勇気も無く。
高校生のある日、布団に包まって泣きながら、当時好きだったバンド「ユニコーン」の「眠る」という曲を一日中聞きながら寝たんです。
目が覚めたら、本当に一度死んで生まれ変わったような気がしました。
そんな出来事から、開き直って強くなれたんです。
死ぬ気になれば山奥で独りで生きることも出来るな、と思えたり。
幸いこんな私でも仲良く受け入れてくれる友だちが居たので、なんとか生きてこられました。
その後、33年経ち…
2022年にオフ会を5回開催し、そこで思いがけず「くさくない」と言われ、人生が一変しました!
今は自分はくさくないと信じられるようになり、普通の生活ができるようになってきました。
少しずつ、周りの反応も減ったし、実際に感じていた謎のにおいもしなくなりました。
今もにおいで不安になることも、実際に運動後の汗のにおいもあるけれど、自分が思っているほどにおいは周りには届かないと知り、あまり気にならなくなりました!
著作者:upklyak</a>/出典:Freepik
IROHAさんが企画に至るまでの道のりについてお話を伺いました。
ストーリー
【キッカケ】
Twitterを2021年10月に始める。
においの悩みがあるが故に「死にたい・消えたい」と思っている人の多さに驚き、誰かが声をあげて行動しなければいけない、と思う。
自分になにが出来るだろうかと考えはじめる。
・
オフ会やにおい確認というものがあることを知る
↓
【ターニングポイント】
2022年5月、におい悩みの人たちのオフ会を開催
くさくないと言われたことで、人生が一変!
・
しかし、においに反応されて自信を無くすので、またオフ会を重ねるを繰り返す
11月までに5回開催
回数を重ねるごとに自信が強くなり、普通の生活が送れるまでに!
↓
【アクション】
2022年12月、自分はTwitterに救ってもらったので、今度は自分が同じ悩みを持つ人たちを救いたい!
カフェを実現するための資金集めるべく、クラウドファンディングに挑戦。
↓
令和5年1月
食品衛生責任者の資格取得
西武池袋線駅東久留米駅から徒歩3分の物件に決定!
カフェのオープンに向けて着実に準備中
Twitterがカフェを考えたはじめたキッカケ
Twitterを始めて、私と同じように自分のにおいで悩んでいる人がたくさん居ること、その多くの人が本当は生きたいのに、その生きづらさから「死にたい・消えたい」と思っていることを知りました。
誰かが声をあげて行動しなければいけない。
自分の子供と同年代の方も多く、自身の経験もあって、胸が締め付けられました。
恥ずかしくて口に出せない悩みだけれど、お茶を飲みながら気軽に同じ悩みを持つ人たちが相談できたり、打ち明けたり出来る場所があったら良いな。。
カフェなんてどうだろうか。
そんな場所が、いつでもあることが、多くの人の救いになれるのではないかと考え始めました。
オフ会が、IROHAさんに自信を取り戻させたターニングポイント
2022年に5回オフ会を開催。
当初の目的は、自分がどんなにおいで、どこからどの位遠くまでにおいがするのか知りたかったから。
わきがを含む体臭、口臭、PATM、IBS等で悩む方々が毎回5~10人ほど参加してくださいました。
初めてのオフ会の当日の朝、私はいつものパートへ出勤。
その日も、私が同僚の近くに行くと鼻を押さえられる反応がありました。
ですが、数時間後のオフ会で「くさくないよ」と言われたのです。
33年間、くさいと思って生きてきました。
過去に、家族や友達に勇気を出して聞いても「くさくないよ」と言われましたが、気を使って嘘をついているんだと、信じられませんでした。
オフ会では、「私は嘘はつかない(においがあるときは、真実を言う)」と前提を確認したうえで、【におい確認】を実施。
同じ経験を持ち、気持ちが分かる人たちの言葉だからこそ、信じられたのです。
そして、オフ会を重ねるごとに、徐々に「私はくさくないんだ」という自信が強くなりました。
特に、Twitterを通して知り合った「体臭検査郵送キット」を販売している臭気判定士/石田さん(オドレート株式会社 https://odorate.jp/ )にオフ会に来てもらった際に、「くさくない」と言ってもらえたことで100%に近い自信が付きました!!
最初のオフ会を開催する前は、正直なところ病んでいるツイートが多いので、どんな人が来るんだろうかと心配していました。
しかし実際には、人の何十倍もにおいについて努力しているから、清潔感があって、素敵な方たちばかりで驚きました。
そんな彼らを見て、においの悩みさえなければ幸せになれるのに、勿体ないと思いました。
早急に解決して幸せになって欲しい、と。
実際、お互いにおいをチェックしても、不快なにおいの人はいなかったのです。
そして、動き出す。カフェ開業への思い。
体臭は、口に出しにくいセンシティブな問題です。
例え、家族や親しい友人でもどんなに知識を持ったお医者さんでもカウンセラーでも、100%理解したり、相談に乗ったりすることは難しいと思うのです。
多くの方が、独りで悩みを抱えて苦しんでいます。
今現在は、本当はにおいはしなかったとしても「今はくさくないよ」と言ってくれる人はいない。
過去の周りの指摘や反応で「自分はくさい」と思い続けてしまう方は、たくさん居ると思います。私もその一人でした。
でも、勇気をだして聞いてみたら違うかもしれない。
周りの反応から推測するのでは無く、今の本当の自分の状態を知ることは本当に大事です。
オフ会を経て、今は「私はくさくない」と信じられるようになり、普通の生活ができるようになってきました。
私は今、幸せです!
まさかこんな日が来るとは思いもしませんでしたが、ある日突然、たった一言がきっかけで幸せを取り戻せました。
だからみんなにも諦めないで欲しい!
カフェ開業の目的は2つあります。
1つ目は、受け入れてもらえる場所を作ること。
自分の経験から「こんな私でも受け入れてくれる人がいる」と思えることが、「生きてていいんだ」という生きる活力と、自分に自信(自己肯定感)を持てるようになるきっかけになると思っています。
2つ目は、においに対してもっと寛容な社会に変えていきたい(生きやすい社会に)。
においを気にすると周りに迷惑をかけると思って、お店に入ることもためらいます。
ですから、お互い様という気持ちで周りを気にせず居られる場所、においを気にせずゆっくりお茶を飲める空間をカフェスペースとして提供したいと思います。
1人でも多くの、においで悩んでいる人の生きづらさを、少しでも減らすお手伝いができたら良いなと思っています。
編集後記
いつも悩んでいる人々に寄り添っているIROHAさん。
日々、同じお悩みを持つ方々からの質問に答えたり、落ち込んでいる人が居たら励ましているのをお見かけします。
IROHAさんのお話を伺い、受容することの大切さ、自信を持つとパワーが湧いてくること、この2点がキーポイントだなと思いました。このカフェで、悩んでいる人々が自信を取り戻すこと、社会でイキイキと過ごせるキッカケになる場になることを応援しています!(春)
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