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『IBS消化器外来の裏話』お悩み相談・質問への回答



オンライントークイベント終了後のアンケートでいただいた相談・質問に、菊池先生に回答いただきました!

似たようなお悩みを持っている方も、参考にしてみてください!



臨床試験に参加した過敏性腸症候群の患者さんで、ニオイに悩んでいる方はどのくらいいましたか? 実際に強いニオイがある方はどれくらいで、どのような治療を受けたのでしょうか?

私たちが行った過敏性腸症候群の心理療法の臨床試験に参加するにはこれまでに効果のなかった治療を試した方が対象でした。その影響もあると思われますが、一般の消化器外来よりも「匂い」の問題を抱える方が多く、10人に1人程度が悩みを訴えられました。それだけ「匂い」というのは治療場所を見つけるのが難しいのだと思います。オンライン治療だったので、匂いの強さについて分かりません。

ただし、「匂いの悩み」は厳密には過敏性腸症候群とは別の病気となります。このため、腹痛や便通の異常ではなく、匂いによって日常生活に大きな支障が生じている場合は、まず精神科や心療内科を受診することをお勧めしています。これは、抗精神病薬が効果的である可能性があるためです。

また、一部の方には心理療法も有効だと考えられます。ただし、「匂い」そのものをどうにかするというよりはそれに伴う精神的な苦痛を和らげることが目的となります。たとえば、周囲の反応に対する考え方を変える練習などが挙げられます。周囲の人が鼻をすする場合に、それが自分の匂いに対する反応以外の理由(鼻炎、鼻水など)である可能性を考えることや、自分がその人の立場だったらどう行動するかを考えてみて、自分が楽になる考え方を選択してみるという方法です。また、信頼できる人と一緒に匂いの有無ではなく、他人への伝わり方を確認する練習も有効だと思われます。ただし、心理療法はできれば医師や臨床心理士(公認心理師)の指導のもとで行うことをお勧めしています。




受験時に、勉強のし過ぎで過敏性腸症候群になった男子がいます。内科を受診して薬はきっちり3か月飲んだということです。受験終了後はリラックスする毎日でとくにストレスにはおもい当たらず、食事は適切、睡眠も十分だとのことですが、過敏性腸症候群は半年以上治らないそうです。どういう原因が考えられるでしょうか。症状や個人によるとは思いますが、どのぐらいの期間で治るのか、目安はありますか?

このような場合にはまず、過敏性腸症候群以外の身体の異常がないかを確認するための診察が必要です。例えば、過敏性腸症候群と似た症状を引き起こす潰瘍性大腸炎などの器質的な疾患は、初期段階では採血や内視鏡検査でも異常が見つからないことがあります。そのため、症状が続く場合は器質的な原因を排除するための検査を検討することが重要です。

診察の結果、過敏性腸症候群と診断された場合も、お腹の症状が薬でうまくコントロールできていたかどうかによって考えるべき原因は変わってきます。

お薬を飲んでいる期間中も症状が改善されていなかった場合は、心理的な影響が考えられます。具体的には、特定の食べ物や行動がお腹の症状を引き起こすという「記憶」によって無意識にお腹に注意が向くことで症状が悪化しているといった可能性があります。このような場合は、注意を他に逸らす心理療法などが有効であることもあります。

逆に、お薬が効果的であったにもかかわらず、中止後に症状が再発した場合は、知覚過敏や腸の運動の異常が続いている可能性があります。また、採血などでも分からない腸の炎症や、腸内細菌の変化によって腸の環境が変化し、「元通り」にならないこともあります。このような場合は急に薬を中止するのではなく、主治医と相談しながら徐々に減量するか、当分は内服を続けることも一つの選択肢となります。




ガス症状を治す方法はないのでしょうか。低FODMAPなどで症状を軽くできる可能性はあるけれども、今の薬では根本的には治らないと聞きました。その上で、今どのあたりまで研究が進んでいるのか、いつ頃薬が開発される予定があるのか、治験はあるのかなど、今ある情報が知りたいです。

ご質問の「ガス症状」がお腹の張る感じである場合としてお答えします。ご質問の意図と違っていたらすみません。

お腹の張る感じ、というのは生理現象でもあります。ガスは多かれ少なかれ腸内に存在しているからです。このため、治療目標は「治す」というよりも、「症状を和らげ、日常生活に支障がない状態」を目指すことになります。過敏性腸症候群は未だに原因がはっきりしておらず、再発のリスクも高いため、「根本的に治す」と言い切ることが難しいのです。

もちろん、内服薬や食事療法で改善する人もいます。一方で、お腹の張りや痛みは注意をお腹に向けることで強調されることがあります。そのため、心理療法を活用して注意を他のことに向けることが有効なこともあります。

心理療法のほかにも、神経系、ホルモンなどの内分泌系、免疫系など脳腸相関に関する研究が進んでいますが、多くは細胞レベルや動物モデルでの結果であり、人間に応用できる段階にまで至っていない状況です。また、腸内細菌に注目した研究も進行中ですが具体的な「効果」についてはこちらも十分に報告されていません。

臨床試験に興味がある場合は、日本の大規模な臨床試験データベースであるUMIN( https://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm )で検索できます。これは誰でも無料で閲覧できます。ご参照ください。



事前質問でも、以下のような質問をいただきました!

こちらはトークイベント内に回答いただいています!


下痢、呑気症、腹鳴で悩んでいます。ズバリ何をすればいいのでしょうか


IBSのメカニズム。FODMAPの中でも特に避けるべき食事はあるでしょうか?


高FODMAP食品で特にお腹が張ります。SIBOを疑って検査を受けたところSIBOではないとのこと。高FODMAPでお腹が張る=SIBOではないのでしょうか。ここまでお腹が張っているのに(ひどいときはウエストが90㎝超えます)SIBOでないとのことで、そもそもSIBOという病気の存在自体を疑ってしまいます。※ちなみに検査を受けた病院はSNSへの治療内容などの投稿を見つけた場合、開示請求することがあるとの誓約書を書かされたので、迂闊に相談できず困っています。(高いSIBO検査受けたら後はもう用なしという感じで…)


腹痛があるところが硬いのは何故でしょうか?

便秘型の特徴的な症状、治療法、セルフケアが知りたいです。

食事の後に腹痛が起きやすいのですが、どんな原因が考えられるのでしょうか?

実際に食事などの腸活と考え方などの心理学とどれくらいのバランスで影響があるのか。どちらをどれくらい対策・改善すれば良いのか分かる範囲で教えていただけると幸いです。


※後日、見逃し配信をアップ予定です!



 

【執筆者】

任意団体IBS placeのなかのひと。アラサーの経営者1年生。

現在はIBS症状が落ち着いており、アクティブに活動中。

IBSの有無問わず自分の意思で自由に選択できる人生/社会にしたい。



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