そうまです。
関東では梅雨入りしましたね。
私が住んでいる九州は晴れている日は暑く、雨や曇りの日は蒸し蒸ししています。
季節の変わり目は体調を崩しやすいです。クリニックに来る患者さんも多くなります。
普段の季節以上に体調管理に気を配っていただけたら、幸いです。
今回はお腹のレントゲン写真の有用性についてお話しします。
1. お腹のレントゲンを撮る病院は少ない
お腹のレントゲン写真を撮ってもらったことがありますか?
健診で胸の写真を撮ることは多いのですが、お腹の写真は撮りません。
お腹の調子が悪く受診をしても、「ではお腹のレントゲンを撮りましょう」となる病院は多くないと思っています。
その理由は何でしょうか?
それは、「お腹のレントゲン写真から得られる情報は少ない」と先生が思っているからです。
大腸に病気があるかどうか。
それは大腸カメラをしなければ分からない、と多くの先生が思っています。
もちろん潰瘍性大腸炎のような、大腸カメラをしなければ分からない病気もあります。
でも実際には、お腹のレントゲン写真から得られる情報は思ったよりもたくさんあるのです。
これからお腹のレントゲン写真を撮るメリットをお話ししましょう。
※正常なカタチの大腸
2. 便の溜まり具合が分かる
レントゲン写真を撮ると、大腸にどれだけ便が溜まっているのかが分かります。
(ちなみに小腸には便はありません。大腸で水分が吸収されて便が作られていくので、小腸ではまだ液体です。)
毎日便が出ていて自分は便秘はないと思っている方でも、レントゲンを撮ると便がたくさん詰まっている方がいます。
「毎日便が出るか出ないかは、便秘にはあまり関係がない」というのが学会の便秘の定義になっています。
もし便は毎日あるのにお腹の不調を感じている方は、実は便が溜まっているという可能性があります。
3. 腸内のガスの溜まり具合が分かる
レントゲン写真を撮ると、腸内にどれだけガスが溜まっているのかが分かります。
ガスの大半は大腸にあります。
大腸に左側(直腸・S状結腸・下行結腸)に溜まっている人もいれば、右側(盲腸部・上行結腸)に溜まっている人も見かけます。
これも自分ではガスの溜まりは意識していない人でも、たくさんガスが溜まっていることがあります。
自分の腸ガスの特徴が客観的に分かると、ガス腹への対応策も具体的に立てることができるようになります。
付け加えるならば、小腸のガスが映った場合(腸炎を起こしている場合を除きます)。
これは基本的には異常所見になります。
IBS(過敏性腸症候群)をたくさん勉強されている方は、SIBO(小腸内細胞増殖症)というワードを聞いたことがある方もいるかもしれません。
IBSとSIBOはかなり関連が深いと言われています。
SIBOについてはまた書きたいと思います。
※捻れてる大腸の模型
4. 大腸のカタチが分かる
レントゲン写真を撮ると、大腸のカタチが見えてきます。
教科書的な大腸は、お腹全体に野球のホームベースのような広がったカタチをしています。
対して痩せている、特に女性の腸のカタチはというと・・・
大腸が臍から下に固まって固定されているのです。
「落下腸」と呼ぶこともあります。
大腸が下、ひどい人は骨盤腔にはまっている人もいます。
このような腸のカタチだと、慢性的にガス腹になりかねないかなとも思います。
5. まとめ
いかがだったでしょうか。
お腹のレントゲン写真から得られる情報は、思いのほか多いものです。
病院が積極的に撮ってくれて、その情報を教えてくれるとIBSの病態を客観的に知る良いキッカケになると思うのですが。
IBSは目に見えない、大腸カメラでは分からない病気と言われます。
だからこそIBSは、普段の便やガスの溜まり具合や腸のカタチからアプローチしてみてもいいのではないでしょうか。
IBSは自身が納得・理解することがとても重要な疾患だと感じます。
客観的な情報が少ないと不安を呼び、さらに病状を悪化させてしまいます。
お腹のレントゲン写真が、もっと多くのIBSの方に広まるといいなと思っています。
【執筆者】
相馬 渉
大分県で、お腹の不調を専門に診察している消化器内科医。 病院やクリニックで、診療が難しい患者さんの症状を診ることが好きです。
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