アニサキス食中毒を探求しましょう
- ibsplaceinfo
- 2022年6月28日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年10月31日
そうまです、
梅雨の時期になり、ジメジメ蒸し蒸ししてきました。
湿気と暑さが出てくると気になるのが、食中毒です。
食べ物をできるだけ新鮮に保ち、外食時にはお肉の生焼けに注意しましょう。
食中毒絡みで、今回はアニサキス食中毒について紹介したいと思います。
アニサキスについて初めて聞く方も、ご存知の方も良かったらお付き合いください。
リアルな写真はちょっと…という方は文章だけでも見ていただけたら嬉しいです。
アニサキスは、お魚に寄生する線虫です。
生の魚(サバ・アジ・イワシ・サンマ・…などなどたくさんあります)に付着していたアニサキス成虫を食べてしまった時に、成虫が胃や腸の粘膜に食いついてしまい症状を起こします。
胃に食いついた場合には、みぞおちあたりがとても痛くなります。
人によっては痛みに耐えられずに、救急車で来院する人もいるくらいです。
腸に食いついた場合には、腸が腫れ上がります。
腸管の内腔は胃ほど広くないので、腫れ上がると腸管を塞いでしまって腸閉塞を起こすことがあります。
怖い話をしてしまいましたが生の魚を食べてアニサキスが身体に入ったとしても、全員が胃腸に食いつかれる訳ではありません。
アニサキス成虫が胃腸に入ってきた時の95%は、食いつかれずにそのまま便として排出されます。
5%の人が不幸にも胃腸に食いつかれて、急性腹症(お腹がとても痛いこと)を発症するというわけです。
多くは前日の食事ですが、生のお魚を食べてアニサキスによる腹痛が疑われる時は胃カメラを使ってアニサキスの摘出をします。
今回は、アニサキス成虫の摘出の現場を覗いてみることにしましょう。
大分県名物の「りゅうきゅう(新鮮な魚を醤油・酒・胡麻・生姜で作るタレで和えた、絶品料理)」を前日の夜に食べて、夜中から激しい胃痛に襲われた患者さんです。
胃カメラで胃の中を覗いてみます。

胃が赤く腫れ上がっていて、その真ん中にクルクルっと回転したものが見えますか?!
これがアニサキスです。
頭を胃のなかに突っ込んで、胃粘膜に食いついているのです。
クルクルしているのは、「胃カメラが入ってきたことを察知して、危機を感じている」証拠です。
食道・胃全体・十二指腸をくまなく観察し他に病変がないことを確認してから、いよいよアニサキスの摘出に入ります。

画面の下から虫体を摘出するための鉗子(カンシ:刃のないハサミのような形をした鋼製器械)が出てきました。
虫体をできるだけ根元で摘み、ゆっくりゆっくりと摘出にかかります。

焦って取り除こうとすると、虫体が切れて頭が胃のなかに食いついたまま残ってしまうことがあります。

取れました。
食いついていた虫体を取り除くと、患者さんの胃の痛みは驚くほど速やかに改善します。
大分県では新鮮なお魚を生で食べる機会が多く、他の地域よりもアニサキス食中毒にかかる頻度が多いように感じます。
私は医者になった20年ほど昔に比べて、アニサキス食中毒は増えている印象があります。
それはなぜかと言うと、以前に比べてお魚を新鮮に食べられる輸送手段が発達したからだと思います。
新鮮なお魚を美味しく食べられる機会が増えた分、アニサキス食中毒にかかる機会も増えたと言うことです。
アニサキス食中毒を防ぐ手段ですが、60度で1分間以上の熱処理を加えるか
長時間の冷凍をすることによって、感染リスクを減らすことができると言われています。
新鮮な生魚を食べたい方には、なかなか厳しいことですね。
アニサキス虫体に食いつかれてしまった場合には、上記のような胃カメラによる摘出が標準治療になります。
最近では正露丸(木クレオソートという成分)を飲むと、アニサキスの運動抑制・さらには殺菌効果があると注目されています。
余談ですが私は10数年前、アニサキスが胃がんに食いついていたのを胃カメラで見つけたことがあり、学会で発表したことがあります。
当時は学会の先生方から「だから何?」と一笑されました。
のちに九州大学の先生が、「アニサキスをはじめとする線虫ががんの匂いを嗅ぎ分けて寄っていく性質がある」ことを発表しました。
身体のどこかにがんができている人の尿には線虫が集まっていくようで、将来的には尿でがんのスクリーニングができる可能性があります。
これを聞いて私は、「当時は笑われたけれど、発表してよかった」と思ったものでした。
いかがでしたか。
生魚を食べてみぞおちが痛くなった時は・・・
『まず正露丸を飲んで、よくならなければ胃カメラをすぐしてくれる病院に行く。』
周りの人でこのような症状がある方から相談されたら、ぜひ教えてあげてください。
【執筆者】
相馬 渉
大分県で、お腹の不調を専門に診察している消化器内科医。 病院やクリニックで、診療が難しい患者さんの症状を診ることが好きです。
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